【完】ぎゅっとしててね?
「ヤヨのことが好き。大好……」



あたしが言い終わる前に、
あたしたちの距離20cmは0になる。



唇が重なった。



受け入れるように目を閉じた。


全身に打つ鼓動を感じる。



あったかい唇は少し角度を変えるだけ。



……長い。
でも離れたくない。


そう思った瞬間に、ぱって離しちゃう。



もっとして?

そう言う暇もなく



「……やっと捕まえた」



ヤヨはそうつぶやいてあたしを抱きしめる。



ヤヨの胸。
どくどく、心臓の音。
もう、それ
壊れちゃうんじゃない?




ナトリウムランプの橙色でも、
この距離ではごまかせなくなった。


ヤヨ、赤い。
きっとあたしも赤い。




離れた屋台の広場から、雑音となる人々の声がする。





抱きしめられたまま。
あたしはヤヨの吐く息の音だけに耳をすませる。





「……今までの誰より愛してやるよ」




あたしは言葉に堕とされた。





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