【完】ぎゅっとしててね?
「……なんだよ?」


「そんなに単語帳握りしめて。ココ受かるのギリギリだったの?」


「そういうわけじゃないけど……。落ちてたら別の高校をこれから受ける予定だったから」



「ふぅん……。キミは頑張り屋さんなんだね?」



ふっくらした唇の形を変えて、にっと笑う彼女。
風に揺られた髪。
花みたいな匂いがした。



「きっとね、ちゃーんと見てる人はいるよ。頑張り屋さん」



そう言って何かを俺に差し出した。



「え?」


戸惑いつつそのお菓子の包みを受け取ると


「芙祐ー!なにしてんのー?!」


遠くから彼女を呼ぶ声。


「すぐいくー」と叫んでから、俺の方を仰ぐ。



「それ、合格祝い。食べて?」


ピンク色の唇は口角をあげる。



受け取ったお菓子をぎゅっと握りしめて、友達のほうへ走っていく後ろ姿を眺めていると。


くるり、踵を返し、振り返る彼女は大きく手を振って。



「抹茶チョコね、マイブーム!」




手のひらには抹茶チョコ。


なんとなく、彼女を目で追った。





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