【完】ぎゅっとしててね?
夏祭り(SIDE弥生)
SIDE 坂木 弥生
***
辺りも薄暗くなった頃。
狭い神社のキャパを越えた人ごみに流されながら、出店を目指して歩く。
「予想してたけどカップルばっかりだね」
「まぁ、そうだろうな」
「ヤヨも3年付き合った元カノちゃんと来てた?」
「来てた」
「へぇー。ラブラブ」
にこにこ笑いやがる。
本当にこいつは俺のことなんかなんとも思ってないから。
嫉妬するわけもないし。
今だってフリー同士の"デート"なんて言いつつ、特別な意味なんか微塵もない。
仲がいいやつなら男だろうと女だろうと、誰でもいいから祭りに来たはずだ。