強引なカレの甘い束縛
心に何も響かず、閉ざされた感覚の中、泣くこともできなかった。
そのことにショックを受けた姉さんは、すぐに私を自宅に連れ帰り、両親のもとには二度と帰さなかった。
精神的に不安定な私を見ては「気づかなくてごめんね。放っておいてごめんね」と後悔の涙を流す姉さんに申し訳ないと思いながらも、私も両親のもとを離れ姉さんと一緒に暮らすことを選んだ。
その後、私は姉さんの家から高校に通い、修学旅行にも行くことができた。
友達と一緒に楽しい時間を過ごし、登山だって無事に頂上までたどりつくことができた。
途中、あまりにもつらくて下山しようかと思ったけれど、担任の先生が私の口に放り込んでくれた氷砂糖の甘さに助けられた。
ようやくたどり着いた頂上は寒くて、お弁当を食べる手も震えるほどだったけれど、そんなことどうでもよかった。
クラスの誰ひとり脱落せず、全員で頂上にたどり着くことができた。
その喜びは、寒さどころか登頂中のつらさをすべて吹き飛ばしてくれた。
そのとき頂上で撮ったクラス写真は、今でも私の家のリビングに飾ってある。
その写真の中の私は寒さのせいで頬は赤く唇も紫色になっているけれど、誰にも負けない大きな笑顔を見せている。
ようやく私が笑うことができ、感情を取り戻すことができた瞬間だった。
能面のように表情のない毎日を過ごしていたのは一か月少し。
思っていたよりも早く回復した私に、姉さんは涙を流し喜んでくれた。
ただ、回復のきっかけが身内である自分ではなく、高校の友達とのつながりだったのは悔しいと、何度も言われたけれど。