強引なカレの甘い束縛
床に落ちなくて良かったとほっとしていると、陽太がそれを手に取った。
そして、意味ありげに私を見ると。
「削除済み?」
問いかけてきた。
「バックアップ取ってるって聞いたから、削除しても意味がないししてない。だけど、私の写真は人前で見せないようにね」
「よっしゃー! 実はバックアップできてない写真があったって会議中に気づいて落ち込んでたんだよな。どうか七瀬の気が変わって削除してませんようにって祈ってたんだ。まじ良かった」
スマートフォンを両手で包み、嬉しそうに息をつく陽太に、周囲はくすくすと忍び笑い。
中には「七瀬に嫌われない程度に追いかけろよ」と陽太をからかう人もいる。
その声にも調子よく「了解」などと応えている陽太を前に、私はどっと疲れを感じた。
「俺のお気に入りの七瀬の写真、見る?」
手にしたスマホを操作し始めた陽太は、私に写真を見せるつもりのようだけど、画面を見る目が細められ、口もとが引き締まった。
「どうかしたの?」
眉を寄せたその表情を見ながら、何気なく聞いてみると、途端に慌てる陽太。