強引なカレの甘い束縛


「OLさん向けのメニューだから、七瀬ちゃんの意見を聞きたいんだけど、いいかな?」

「あ、大丈夫ですよ」

輝さんにそう答えながら、砂川さんや園田さんを見ると、何故か砂川さんが意味ありげに笑っていた。

「OLさん向けだなんて言わずにふみかちゃんのために考えたメニューだって言えばいいのに。もう、照れ屋さん」

「え? ふみかさん……」

「そうなのよ、輝の手料理を毎日食べてる可愛い女の子なの。いい加減早く自分のものにしちゃえばいいのに、照れ屋さんなんだから」

くつくつ笑っている砂川さんに、輝さんは小さく息をついた。

「それだけ人のことからかう余裕があるなら夕食の差し入れはもういらないな。プロジェクトだなんだとばたばたしてるからって週に何度も俺の料理を持ち帰るなんてこと、もうしないよな?」

「あ、あ、輝、それとこれとは別だし」

「それに、俺はふみかの夕食を作るのに忙しくて、姉貴どころじゃないんだよな」

「ひかるー、ふみかちゃんの夕食づくりのついででいいから、我が家の分もお願いします」

砂川さんは焦った声を出し、胸の前で両手を合わせている。

その横で、園田さんは目を細めて笑い、輝さんと視線を合わせていた。

「奏さん、こんな姉貴ですみませんね。仕事するしかできない女なんで、姉貴じゃなくて兄貴だと思って諦めてるんですけど」

「たしかに、夢は家事をラクに済ませることを生きがいにしてるところもあるし、仕事にしか興味なさそうだけど」

「でしょう? こんな兄貴……いえ、姉貴をもらってくれてありがとうございます」

輝さんは軽く頭を下げた。

砂川さんは、その姿を顔をしかめながら見ている。




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