強引なカレの甘い束縛
カウンター席に腰かけた私に、輝さんは新しく淹れてくれたコーヒーと『わらび餅』を出してくれた。
白い花形の小皿に盛られたそれは四角に切り分けられていて、きなこがかけられている。
その傍らには黒蜜の小瓶が並べられた。
「わらび餅は甘みを控えてるんだ。物足りなかったら黒蜜で調整して」
「あ、はい。ありがとうございます」
私はわらび餅を竹のフォークを使って口にした。
とろりとした食感に思わず「おいしい」と言葉が出るけれど、なんだか腑に落ちないものを感じた。
手元のコーヒーを飲みながら輝さんを見れば、私の視線を予期していたのか、口もとだけで軽く笑った。
「輝さん?」
「俺の手作りわらび餅、うまいだろ? ふみかも何度か食べたけど、気に入ってるんだ」
「何度か……?」
「そう。もともとこれは『マカロン』の隠れメニューでさ、常連さんに頼まれたときだけ用意してるんだ」
「でも、新作ってさっき言っていたような気がするんですけど」
輝さんは、カウンターの向こうそばからにやりとした表情を向けた。
「新作だよ? そのわらび餅にまぶしているきな粉にはほんの少しだけど黒ゴマが混ざっているんだ。それが、新しいんだ」
「黒ゴマって、それだけで、新作……ですか?」
私は手元のわらび餅をじっと見て、きな粉に混じっている黒ごまを確認した。
たしかに輝さんが言うとおり、ほんの少しだけそこにあった。
口に入れた時にも多少ごまの風味は感じたけれど、とくに新作だと強調してまで私に試食させるほどでもないのに。