強引なカレの甘い束縛
「まあ、えっと、常連さんが欲しがるくらいおいしいのはおいしいですけど」
小皿に残っているわらび餅を再び口にしながら首をかしげていると、背後のテーブルから陽太の声が聞こえた。
「じゃあ、この日までに完了しておかないと、すべての作業が止まって、銀行業務に影響が出るってことですよね」
思わず出てしまったような大きな声に振り返ると、陽太が手元の資料と園田さんを交互に見ながら口もとを引き締めていた。
さっきまで私も見ていた資料について質問しているようだけど、テーブルにいる三人ともさらに真面目な顔つきに変わっている。
砂川さんにいたっては、輝さんをからかっていたお茶目な様子は完全に消え、ファイルをめくりながら何かを取り出し、それを陽太の目の前に置いてマーカーでラインを引いている。
今日ここに来たのは陽太が召集されたプロジェクトについて、業務時間内にはなかなか聞けない深い部分を砂川さんと園田さんに聞くためだ。
ここに来る途中、電車で眠ってしまった私を肩で支えながら、陽太は園田さんに質問するために用意していた資料を確認していた。
電車が揺れ、気持ちのいい眠気に素直に従いながらも、大きな揺れがある度意識は浮上していた。