強引なカレの甘い束縛


かさりと音がしてふと瞼を開ければ、陽太が資料に目を通していて、私が多少動いてもそれは変わらなかった。

集中してそれを読んでいることがわかった私は、目が覚めたことを気づかれないよう慌てて目を閉じた。

その寸前、ちらりと見た陽太の表情は緊張しているのがありありとわかり、視線の先にある資料を睨むように読んでいた。

今朝早くに連れ出され、カフェで朝食を食べたり『ルイルイ』でシュークリームを買ったり。

その間ずっと明るい声と表情でいたのに、まるで別人のような様子を見せられて驚いた。

今園田さんと砂川さんとやりとりをしている陽太は、そのときの様子そのままで。

声をかけることをためらうほどの硬い表情。

入社以来ずっと陽太の近くにいるというのに、こんな陽太を見るのは初めてだ。

「姉貴もそうだけど、奏さんも仕事の話となると顔つきが変わるんだ。ふたりとも責任ある立場だし、とくに姉貴は女であるハンディを跳ね返しながら今のポジションを掴んだから手を抜くこともできない。だけど、姉貴は現状維持ってのが嫌いで、昔から新しいことを追い続けてきた。陽太くんも、今はそんな感じだな」

陽太たちを見ながら、輝さんは呆れたような声で教えてくれた。





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