強引なカレの甘い束縛


「ホール? それはいいけどひとりで食べられるのか? かなりのボリュームだろ?」

「え? そんなのへっちゃら。今日の夕食はそれで決まり」

「夕食ってお前……」

私の言葉に呆れた声をあげる陽太ににっこりと笑って見せる。

「夕べも残業で終電帰りだった私を運転手として早起きさせたんだから、文句は言わないでよ。本当ならお昼まで眠りたおす予定だったのに」

「昼まで寝るより、お日様の下でバーベキューの方がよっぽど健康的だと思うけど?」

「内示の事前発表会のどこが健康的なんだか」

「まあ。それもサラリーマンにとってはかなり重要なことだからな。七瀬だって影響は大きいだろ?」

ほんの少し声音が真面目なものに変わった陽太の顔をまじまじと見つめる。

事務職の私には、本社内で他部署への異動はあっても地域をまたいだ異動はない。

大きな異動がない代わりに出世してお給料が上がるという楽しみはないとはいえ、私は概ね満足している。

大学を卒業してから五年が経ち、同期入社の女子の半分である八人は既に結婚している。

そして、年内に結婚予定のふたりを加えると、二桁の人数が人生の次のステップへと進んでいるにもかかわらず、私には何の予定もない。


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