強引なカレの甘い束縛
「頑張れ……って言うことしかできないけど」
「ん? そんなに落ち込むことはないだろう?」
「でも、結局こうして離れた場所から三人を眺めてるしかできないし。輝さんは、私が三人と一緒にいても役に立たないってわかったからわざわざ新商品の試食なんて言って私をカウンター席に移らせたんでしょ?」
「お? さすがに気づいたか。鋭いなあ」
ちらりと睨んだ私に、輝さんはおどけたように体を揺らした。
そして私の頭を撫で、くくっと小さな声を漏らした。
「笑うところじゃないです」
「まあまあ。カウンターに連れて来たのは陽太の気持ちを考えてのことで、別に七瀬ちゃんのことをばかにしたわけじゃないから気にするな」
「そんないい加減なことを」
「いい加減でもないんだ。陽太はこれから背負うものの大きさに潰されないように必死で、男は必死な自分を惚れた女に見せたくないんだよ。せめて同じテーブルにいなければ、どれだけ切羽詰まっているのかをごまかせるって思ってるはずだ」
私は輝さんの言葉に納得できないまま再びわらび餅を口にする。
その冷たさを感じて、気持ちを切り替えようと息をついた。