強引なカレの甘い束縛
普段から聞き慣れている優しい声が、さらに甘く聞こえて照れくさくなった。
そして、『史郁さん』は一体どんな人だろうかと、興味がわいてくる。
カウンターの中にあるスツールに浅く腰かけて嬉しそうに話している輝さんをぼんやり見ながら残っていたコーヒーを飲んでいると、再び陽太の声が聞こえてきた。
そっと振り向くと、さっきと変わらず資料とタブレットを見ながらも、その表情は明るく、声も弾んでいる。
園田さんも陽太にひと言ふた言何かをつぶやいたあと、ほっとしたように椅子の背に体を預けた。
話し合っていたことが解決したんだろう、砂川さんも笑っている。
陽太もひと時落ち着いて資料を眺めたあと、素早くペンを手にして資料になにやら書き込み始めた。
時折頷き、かなりの量を書き込んだあと、満足げに口もとを上げた。
ああ、職場で見るいつもの陽太だ。
前向き、真面目、諦めない。
そんな姿勢を貫く陽太に私は気持ちを掴まれて、好きになったんだ。
今もその時と同じ姿を目の前にして、惚れ直してしまう。
朝早くから私を連れ出してここに来たというのに、今の陽太の頭には私の存在はまったくないようだ。