強引なカレの甘い束縛




今でこそプロジェクトに召集されるほどシステム開発に精通しているけれど、陽太も入社してからシステムの勉強を始めている。

稲生さんも、いずれは陽太のような仕事をしたいのかもしれない。

「私は、稲生さんのように自分から進んで参加するわけじゃないけど、せっかくだからシステム開発のこと、詳しく知りたいとは思うかな」

稲生さんのように強い思いはないにしても、陽太が必死で取り組んでいる仕事の内容を多少なりとも知っていたい。

そして、陽太の仕事をサポートすることはできなくても、陽太の話を聞いて、進捗状況を知ったり、トラブルの内容を理解してあげる程度のことはできるようになりたい。そんな安易な気持ちが講習会に通じるのか不安だけど、大原部長からもらったこの機会を無駄にしたくない。


現状維持と変化のない毎日。

それだけを大切にこれまで生きてきた自分にとっては、自分の能力を少しでも高める努力をするという、新しい変化。

これもまた、陽太との関係が深くなったからこそだ。

私を新しい場所へ連れ出そうとしてくれる陽太のためにも、そして何より自分のために、頑張ろう。

そんな気楽な私とは違い、稲生さんはかなり本気で講習会に臨むようで。

「この講習会の後、大原部長にお願いして総合職試験を受けるための勉強会にも参加しようと思っているんです。入社五年目以上で、部長の推薦がなければ試験は受けられないんですけど、今から頑張ろうと思って」

力強い言葉を口にしている。

表情からもその本気は伝わり、まだ若いのにしっかりしているなと、お局じみたことを考えた。



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