強引なカレの甘い束縛
そう、これまでとは違う、新しい世界への第一歩が今日の講習会なのかもしれない。
それは、現状維持にこだわっていた自分を少しでも解放させようとしている私と似ているようにも思えた。
「稲生さんって、見た目は『お嫁さんにしたい女性社員』として認知されるほど可愛いんだから、これで仕事もバリバリにこなして男性社員から頼られるようになったら怖いものなしだね」
「え……と。お嫁さんにしたいってのは、結構面倒なんですけどね。どちらかといえばお嫁さんが欲しいくらいで。家事一切母任せで何もできないし」
「あ……そうなんだ。ふふっ。そんなことを言っちゃうのも見た目とのギャップに男性はキュンとしそうだね」
「か、からかわないでくださいよ。ギャップという意味で言えば、萩尾さんだって今の仕事と学歴にはかなりのギャップがありますよ」
稲生さんは落ち着きを取り戻しつつあるのか、表情も普段と変わらない柔らかさを浮かべている。
そのことにほっとしながらも、興奮していたさっきの彼女も可愛かったなと、私はくすりと笑った。
もちろん、落ち込んでいた彼女も魅力的だった。
それに、稲生さんの言葉は社員の誰もが納得していることだ。