強引なカレの甘い束縛
②
午前中に会社で必要最低限の業務を慌ただしく済ませて、午後からは講習会に出席する。
そのどちらもが時間に追われるようで、気持ちが休まる時はなかった。
たった五日間だと安易に考えていた私は、初日からガツンと頭を殴られたような衝撃を受けていた。
『五日間で、システム開発でお金を稼げる道筋をつけます』
挨拶もそこそこに講義を始めた講師陣は皆厳しくて、講義のスピードもかなり速かった。
システム業界の概要と今後の展望をざっくりと話したあと、実務のみに絞った講義は気を抜く暇もなく、午後からの五時間はあっという間に過ぎていった。
クレジットカードの決済システムを例にとっての講義は、時おり知っている言葉も耳に入り面白いと思えたけれど、医療事務に関するシステム開発を勉強するときには全く聞いたこともない言葉の羅列に呆然とした。
それでも、初めて見る、聞く、そして学ぶ世界は興味深く、大学を卒業して以来の宿題の山を目の前にしても、それはそれで新鮮だった。
「はあ、ようやく終わりましたね」
「うん、お疲れ様。課題もすべて提出したし、あとは成績が返ってくるのを待つだけだね」
「あー、やだやだ。事務職から飛び出して総合職への足掛かりにしようと思って受けたのに、こんなに難しい講義だとは思いませんでしたよ」
「そうだね。なかなか厳しかった」
「そんな涼しい顔をして言わないでくださいよ。萩尾さんはしっかりついていってましたけど、私はもう、大原部長の手元に成績が届くのが怖くて怖くて」
「稲生さんも、なかなか筋がいいって先生に言われてたのに」
無事に五日間の講義が終わり、私と稲生さんは会場を後にした。