強引なカレの甘い束縛
「私、いつか来てみたいと思ってたんですけど、まさか今日来られるなんて、うれしいです」
お店に入った途端、感激した稲生さんが高い声をあげた。
たしかに、『マカロン』にスムーズに入ることができ、おまけに席が用意されているとなれば、気持ちが昂ぶるのもよくわかる。
今週発売された雑誌でも特集を組まれていたし、今では輝さんの名前と男前の顔は世間に知れ渡っている。
「あ、あの人が砂川さんの弟さんの輝さんですね。わー、さっきスマホで検索して確認した写真よりずっとカッコいいです」
稲生さんの視線の先には、カウンター近くで接客をしている輝さんがいた。
黒いカッターシャツとジーンズ。
細身だけれど、バランスよくついた筋肉が男っぷりを強調していて後ろ姿にさえ見惚れてしまいそうだ。
「それにしても、混んでるね。まあ、こんな中で席を用意してもらえる私たちってラッキーすぎる。週明けに砂川さんにお礼を言っておかなきゃね」
ひそひそと稲生さんと話していると、ふと振り返った輝さんと目が合った。
人当たりのいい笑顔は営業用だと笑っていたけれど、私に気づいた途端、その顔はくしゃりと崩れ、大きな笑顔を見せてくれた。
そして、私たちを手招きし、カウンターの席を視線で教えてくれた。