強引なカレの甘い束縛
大けがをした私を想像して、かなり落ち込んでいる。
話さなければ良かったかなと、私も少し、落ち込んだ。
「ごめんね。姉さんにも叱られたし、すごく泣かれたし。反省した。だけど、あの日私が逃げ出した理由を、姉さんは勘違いしたままなの」
「勘違い?」
「うん。気を失いそうになったとき「姉さん、やだ、来ないで」って言ってしまって、側にいた忍さんだけがその言葉を聞いて……姉さんは聞いてない。だから、姉さんは今でも私が単純に父さんと母さんを恋しがってあの家に行ったって思ってる。あとから気づいたんだけど、あの日は父さんの誕生日だったから」
話しているうちに、目の奥が熱くなってきた。
目じりに涙が溢れてきて、今にもこぼれ落ちそうだ。
私は慌てて目を閉じ、手の甲を当てた。
こぼれる涙を止めようと必死でまぶたを押さえても、ひとすじ流れてしまえばそれに続いて幾すじもの涙がこぼれ落ちる。
「やだ……」
自分に責任があることで泣くなんて、ずるい。
姉さんの私への愛情を面倒に思って逃げ出して、そして大けがをしたのは、すべて私の責任なのに、泣いちゃだめだ。
それに、私が背負うべきもっと大きな罪があるのだから。
倒れている私のもとに急いでいた姉さんも、階段を踏み外して落ちてしまったのだ。
残り十段ほどだったけれど、落ち方が悪かったせいで、姉さんは足を骨折してしまった。