強引なカレの甘い束縛
ここ最近、自分のすべてを一気に解放させたかのような、陽太の甘くて強引な言葉に慣れた気でいたけれど、それは間違いだった。
陽太の私への想いは想像を超えていた。
硬直した私の体を優しく撫でる陽太の指先にぴくぴくと反応しながら、体温が急激に上がるのを感じる。
いつの間に、私のことをこんなに考えてくれていたんだろう。
姉さんにけがをさせた過去を知っても私を責めることなく、それどころか私のことをこれからもずっと守ってくれると迷いなく口にする姿はもう、今までの陽太と同じには見えない。
「七瀬は俺にどう思われるのかを気にして、お姉さんのことを言えなかったみたいだけど、俺の気持ちをなめるなよ? 何を聞かされても、俺が七瀬に惚れてる気持ちは変わらない。だてになんの行動も起こさずに五年も七瀬の隣にいたわけじゃない。七瀬のむかつくところも腹が立つところも。生意気なところも頑固なところも、全部見てきたんだ。だから、早く言って欲しかった……。俺は、七瀬が抱えているお姉さんへの罪悪感を、早くぶちまけてほしかった」
「え? それって、どういう?」
陽太の言葉がひっかかり、私はもぞもぞと体を動かして顔をあげた。
姉さんのことをぶちまけるって、突然言い出した陽太が理解できない。
「あ、あの?」
戸惑いながら視線を向ければ、私を見下ろしている陽太の顔は、どこか硬い。
「陽太?」
問いかけた私に、陽太は天井を仰ぎ、小さく息を吐いた。
何度か瞬きを繰り返し、私を抱きしめた腕をそっと緩めた。
私たちの間にほんの少し距離ができたけれど、陽太の手が私から離れることはない。
そして、陽太は再び口を開いた。
「七瀬を好きになって、必ず手に入れたいと思った俺が、何もせず手をこまねいたままでいたと思うか?」
陽太は腰を落とし、ふたりの額をこつんと合わせた。
近すぎる陽太の瞳がぶれることなく私を射る。
「好きになった女を、ただ側にいて見つめるだけしかできないことが、どれほどつらいか、わかってるか?」
低い声で、私に問いかける陽太。
体ではなく、声で私との距離を詰めるような強さに、私の体は震えた。