強引なカレの甘い束縛
②
初めて入った宝石店は、毛足の長いカーペットが全面に敷かれ、厳かな雰囲気を漂わせていた。
女性に人気のお店だと知っていたけれど、気軽さと高級感が同居した店内に、思わずあとずさり。
音羽家のみなさんなら慣れているんだろうなと、意味もなく思った。
姉さんも『ジュエルホワイト』を気に入ってると聞いたような気もするし。
緊張する気持ちを落ち着けるようにそう言えば、陽太は「忍さんも、この店はお気に入りだって言ってたな」と答えてくれた。
やっぱり、そうなんだ。
とはいっても、あらゆる価格帯の宝石を取り揃えているというお店には、私よりも若いカップルもちらほら見え、ほんの少し、ホッとした。
私よりもお店の雰囲気を楽しんでいた陽太は、ネットの画像を見ながら私が気に入った指輪を無事に買うことができ、安心したようだ。
もちろん、私もうれしくてたまらない。
高級感漂う商品が並ぶ陳列ケースをおそるおそる覗き込めば、見慣れない輝きに圧倒された。
適齢期の女性の多くが夢見る婚約指輪と結婚指輪を買いに来たというのに、いまひとつ現実味のない時間をぼーっと他人ごとのように感じて過ごしたのは私だけだったようで、陽太は私の隣で満足げに笑っていた。
『初めてのお揃いがマリッジリングって、なんだかいいな』
さらりとそう言ってのける陽太の横で、私ひとりが照れた。
なんだか、むかつく。