強引なカレの甘い束縛
好きになってもいつかは異動してしまう陽太とは離れてしまうと言い聞かせ、好きだという気持ちを大きくしないように無理をしていた。
そのせいで、陽太の本来の姿から目を逸らしていたのだ。
そして、私が陽太に振り回されているのではなく、この何年もの間、私との関係に悩み、どうすれば私にとっての最善なのかを考えてくれていた陽太を振り回していたのは私だったと思い至るのだ。
長い間、忍さんに私のことを相談し、過去の出来事を聞いて、どう思っていたのか。
遠回しに聞いても、あっさりと「何を聞いても、どんどん七瀬を好きになっていった」と平然と答える陽太の朗らかな声に、私は熱い顔を隠すこともできず、口をぱくぱくさせていた。
陽太の素直さ、私も見習いたい。
婚約指輪と結婚指輪を決めて、刻印の注文をしてお店を出たとき、これまで感じたことのない疲れに襲われたけれど、それもまた、後々のいい思い出になりそうだ。
そして。
満足という言葉では追いつかない喜びを隠そうとしない軽やかな足取りに並び、歩く。
すると、つないだ手の強さと温かさが私の体に伝わり、ようやく陽太との結婚が現実味を帯びてきたと感じた。