強引なカレの甘い束縛
ふうっと小さく息を吐き出し、私は手元のコーヒーを飲む。
このカフェで人気のチーズトーストを食べ終えて満足した私は、稲生さんが食べ終わるのを待ちながらスマホを手に取った。
週末、陽太のご両親に会ったときの写真を呼び出して見れば、陽太によく似た整った顔立ちの男性。
パイロットである陽太のお父さんと、すっきりとした顔立ちでどこから見ても隙のない綺麗な女性。
陽太のお母さんは、化粧品会社の営業部長を務める仕事人間らしい。
せっかくだからと私とご両親の三人を並ばせ、陽太が写真を撮ってくれたのだ。
これまで、自分の両親の話をするのが嫌で、陽太のご両親のことを話題にすることはなかったけれど、ご立派なふたりを目の前にして、緊張感は半端なものではなかった。
「それ、ご両親ですか?」
稲生さんが、私のスマホの画面に気づき、にやりと笑った。
「あ……。うん。陽太のご両親なの。週末ご挨拶に伺ったんだけど、あまりにも緊張して、何を話したのかも覚えてないんだよね」
ははっと笑った私に、稲生さんも笑顔を返してくれた。
「わかります、わかります。でも、写真で見る限り、優しそうですね」
「そうなの。ほんとに陽太と結婚して後悔しないのかって何度も聞いてくれるんだけど、そのたびに陽太は拗ねちゃって。面白かった」
「簡単に想像できます。萩尾さんのことになると、いつもムキになるというか、無駄な心配をしてあたふたしてますよね」
くすくす笑う稲生さんにつられて、私も小さく笑った。