強引なカレの甘い束縛


市川巽と『マカロン』で会ったのは夢だったのかと思えるほど、そのことに触れようとしない稲生さんが気になって仕方がない。

けれど、彼女とようやく親しくなりつつある私には、それを聞くことはできない。

聞いてはいけないような、そんな気がしていた。

人の恋路に口出しするなんて無神経だと自分に言い聞かせながら、ぼんやりと窓の外を見ていると。

「そろそろ、行きましょうか。どんな成績でも、落ち込みすぎないようにしましょうね」

ほんの少し緊張が乗せられた声が聞こえた。

「そうだね……。だけど、金曜日のテストの結果が月曜日にさっそく返ってくるなんて、早すぎない?」

「ですよね」

はあ。

稲生さんと私は、肩を落とし、大きくため息を吐いた。

「まあ、いつ返ってきても、結果は同じだもんね」

私は覚悟を決めて、立ち上がった。




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