強引なカレの甘い束縛
横断歩道の真ん中に立ち尽くしている公香に駆け寄り抱き上げた。
背後から、「公香っ」と叫んでいる姉さんの声。
そして、横断歩道の向こう側から私たちに向かって走ってくる陽太の姿。
「七瀬、早くこっちに来い」
叫びながら駆け寄る陽太の姿に、私は公香を抱きしめ、必死で走った。
もつれそうになる足を動かし、公香を守るように抱きしめながら。
渡り終える途中で陽太が私のそばに駆け寄り、背中を押してくれる。
その温かさを感じた瞬間、ホッとして、泣きそうになった。
ほんの数秒。
だけど、公香を失うかもしれないと不安におびえた長い時間。
横断歩道の向かい側に着くと同時にしゃがみ込み、大きく息を吐き出した。
むせながら私の腕の中で泣いている公香に、「もう、こんなことしないでね。ななちゃん、どうしようかと……」
荒い呼吸を繰り返しそう言って、はっと後ろを向けば。
通りの向こう側でしゃがみ込んだままの姉さんが、泣いているのが見えた。
「俺が連れてくるから、待ってろ」
陽太も姉さんに気づいたのか、そう言って私の背中を撫でてくれた。
視線を向ければ、緊張感が残ったままの笑顔。
いつも私を守ってくれる陽太の笑顔にホッとして、私は大きく頷いた。