強引なカレの甘い束縛
そして、少しずつお店に近づく中で、陽太に抱き寄せられほてった体には、これ以上の刺激はいらないと実感する。
甘い甘いチョコを食べながら、ほんの束の間、何も考えずに心を解放したい。
そう思いながら、陽太の胸に体重を預けてみる。
好きだと想いを伝えあい、寄り添うことが自然に想える……ように努力しながらのこの時間が、いつまでも続けばいい。
「今すぐ甘いチョコアイスが食べたい」
待ち遠しい思いを口にすれば。
「俺は、七瀬が……いや。俺もチョコアイスが食べたいな。……とりあえず」
チョコアイスよりも甘い言葉を聞かされて、私の体は一気に熱を帯びた。
お店に近づく歩幅の小ささは、私が陽太への想いに素直になったスピードのようだ。
両親と姉さんから離れて、地上に降りるまでの長い時間。
そんな私を抱きとめてくれた陽太と始まるこれからは、それこそ私が生きる信条としてきた『現状維持』のもとで。
「周りが変わっても、この手がここにあれば、いいかな」
私の腰に置かれた陽太の手に、そっと私の手を重ねた。
私にとっての変わらぬものが、唯一、この手の温もりだけになったとしても、それはもう望むところだ。
現状維持したいのは、陽太の側で笑っていること。
落ち着きのない、変化に富んだ刺激ばかりの未来が待っているとしても、ただ、それだけ。
この温もりを、変わらず感じていたい。
それだけだ。