強引なカレの甘い束縛
③
大原部長は社内では仕事ができる人だと知られている。
仕事ができるとはいっても単に効率よく業務を進め、会社への貢献度が高いというだけではない。
実際に仕事をするのは人であり、人を上手に育て適材適所に割り当てなければ会社に未来はないという信念を貫く姿勢が周囲からの高い評価につながっているのだ。
そして、大原部長は会社にとって社員は利益を上げるために動かす歯車にすぎないという持論も持っていて、ことあるごとに
『会社は社員を遊ばせるために給料を払っているわけではない』
という言葉を口にする。
何を目的に仕事をするのかといえば、やりがいや自分の夢だったから、という理由を挙げる人も多いけれど、大原部長は一貫して同じ言葉を繰り返す。
『お金を稼ぐため』
それ以外にどんな理由があるんだと、ぶれることなくそう言う部長に反論する社員もいるとはいえ、やりがいと夢だけで生きていけるわけではない。
まずはお金を手に入れなければ仕事どころではない。
そして、会社は社員の才能や技術の対価としてお金を支払う。
いわゆる給与だ。
その関係を円滑に保つための努力をすることが、管理職に与えられた役割だとはっきりと言い切る大原部長に迷いはない。