強引なカレの甘い束縛
会社に貢献し、利益を生むための業務をまっとうする。
社員がそれを遂行できるように居心地のいい環境を整えるためにはどうすればいいか。
会社にとっても社員にとっても効率よく。
大原部長がそのために行っているひとつが、半年に一度のバーベキューだと、陽太が教えてくれた。
私の家の近くのスーパーで買い物に付き合ってもらいながら、ぽつぽつと話す陽太の声に耳を傾ける。
カートを押しながら、時々立ち止まり、私が放り込む商品をその都度手に取っては『七瀬の家にまだあったぞ』や『先月買ったメーカーのほうがおいしかったぞ』と言っては買っていいものとそうでないものを分けている。
私の家の現状を私以上に知っているといってもおかしくないほど私の家にやってくる。
陽太が私と同じ部署に配属され、ふたりで喜び合って以来の付き合い。
年を追うごとに付き合いの親密度は増し、私たちは同居しているのではないかと錯覚するほど一緒に過ごしている。
けれど、恋人同士というわけでもないし、私の気持ちはともかく、陽太にそうなるつもりはないと思っていたけれど。
今日のバーベキューでの甘い言葉の数々を思い返せば、陽太も私と同じ気持ちだったのだとわかる。