強引なカレの甘い束縛
自分の気持ちに何重もの蓋をして、そして今を楽しめればそれでいいと、自分に言い聞かせても。時にはこうして本音がぽろりと顔を出す。
五年間を共に過ごした気安さと慣れが、私の気持ちを緩めるのかもしれない。
「いつまでも、こうしていられるための、バーベキューだったんだけどな」
いつの間にか私の隣に並んだ陽太が、私の顔を覗き込んだ。
私はちょうど手にした卵を落としそうになり小さな声をあげた。
「驚かせないでよ、卵が割れちゃうでしょ」
「七瀬が落とすかもしれないって思ってたから、こうして卵を下から支えてるんだろ」
「あ、本当だ」
私の手を下から支え、いつ卵が落下してもつかめるよう準備している。
私の手を支えているというよりも、包み込んでいるようなふわりとした優しさを感じる。
陽太の体温に触れてどきりとした気持ちを隠しながら視線を上げると、普段と変わらない落ち着いた切れ長の瞳が私を見つめていた。