強引なカレの甘い束縛
相変わらず私の手を掴んでいる陽太の背中にそう声をかけた。
けれど、ちらりと振り返った陽太は、私の言葉を聞き流したかと思うと近くに置かれていたワインを手に取って。
「七瀬はこの甘いワインが好きなんだよな。今日はこれにしよう」
にっこりと笑った。
その手にある赤いワインは、たしかに私のお気に入りのひとつ。
とはいっても、私はそれほどお酒が好きというわけではなく、飲む銘柄は限られている。
だから、陽太がこれを手にしても不思議ではない。
私の質問に真面目に答えてくれない陽太にじれったさを感じながらも、普段から慣れているものを普段と変わらずに飲んだり食べたり。
おまけに、女友達の誰よりも一緒にいることに慣れている陽太とふたりで飲むのなら。
「じゃ、おつまみに、陽太の好物の茄子の煮びたしでも作ろうか?」
ついつい、優しい声が出てしまう。
「お、上等上等。七瀬の料理はなんでもうまいけど、和食は絶品だもんな。ついでに炊き込みご飯も作ってくれれば最高なんだけど」
大きな笑顔を私に向ける陽太のおねだりは、私の中から拒否権を奪い取る。