ひみつの琴子さん【修正 & side story完結】
あっ…
会いたいと願った時には、会えなかったのに、こんな日に限って会ってしまう。
通用口を出た所で、矢神さんと香坂人事部長が少し前を歩いていた。
今の私は、清掃会社の「木下 愛」だから、気付かれないはず。
うん。大丈夫だ。
キュッ、キュッ、キュッ、、、
うぅぅ…
この靴、どうしてこんな音するんだろ。
夜更けのオフィス街は、人通りもまばらで、スニーカーの靴音は場違い感が…
早く駅に着かないかな…
「……」
「愛ちゃん…なんか今日はおとなしいね?」
亜季さんが不思議そうに尋ねる。
「…ちょっと疲れただけデス」
自分の声が、前方を歩く矢神さんたちに聞こえてしまいそうで、つい小声になる。
はあぁぁ…
やっと駅に着いた…て、
なぜ…矢神さんも私と同じホームに?
この間は車で送ってもらったから、矢神さんのマンションがどの辺りか分からなかったけど、もしかして、ご近所さん?