ひみつの琴子さん【修正 & side story完結】
さっきから、拓海は" 晴香" て女の子と話してばかりで、私の方を見もしない。

これから一週間、会えないんだよ?
拓海は平気なの?

拓海の心は、すっかり大阪の店のことで一杯のよう。


仲良くはしゃぐ二人を視界に入れたくなくて、私は下を向く。


ダメだ。笑わなきゃ…


鼻がツーンとして、目の奥から、涙が出てきそう。



『間もなく…博多方面…10時15分発の列車が参ります…』

アナウンスが流れ、新大阪方面行きの列車が駅に滑り込んだ。


うつむく私の前に、見慣れた靴が視界に入る。


「万里さん、行ってくるよ」

唇に、触れるだけのキスをした。

「…いってらっしゃい」

笑顔を作った。


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