ひみつの琴子さん【修正 & side story完結】
ギョッとする。

独り言に気付かない振りをしようか?

でも、今思わず隣を見ちゃったし、無視するのも不自然か?

いやいや、見ず知らずの他人という立ち位置だから、

こっそり深呼吸をする。



私は目線だけで、隣の人…矢神さんに黙礼する。

「……」

「失礼…どこかでお会いしませんでしたか?」


げっ、質問しないでーーっ!


「……」


私は首だけを傾げる。


「そうでしたか…さっきから思い出せなくて、思わず話しかけてしまいました」


「いえ」


動揺を悟られないよう、しっかりと矢神さんの目を見つめ、短めに返す。

腕時計を確認する。

結構な時間が経っている。帰ろう。


読みかけの本に栞を挟んで、私はスツールから降り、空のカップの乗ったトレーを持ち上げる。


隣の矢神さんに黙礼して、サッサと退散だ。










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