オフィス・ラブ #another code
「マーケ、ですか」
「そう、急だけど」
午後、昼休みが終わるか終わらないかのうちに課長に呼び出された。
フロアから少し離れた小さな会議室で、顔をつきあわせる。
異動。
「内密だけど、新部門が立ちあがるらしくてね、そこに入ってほしいって」
企画部で2年、営業に来て6年。
悪くないタイミングだと思った。
もう少し営業を極めたくもあったけれど、自由のきく立場のうちに内勤を経験しておくのは、悪くない。
もとより、選択肢もない。
「お受けします」
課長は、ほっとしたように微笑みつつも、少し肩を落として言った。
「正直、渡したくないんだけどね。いい機会だもんね」
「またどこかで、ご縁がありますかね」
この人とも、不思議な縁が続いている。
それを思い返して、ふたりで笑った。
「補充の人員は?」
「それが、予定ないんだよ。人事も無責任だよね」
そうか、それは相当に、チームの全員に負荷をかけることになる。