オフィス・ラブ #another code
「説明員は、新庄と楠田で回そう」
「はい」
システムの社内説明会の具体的なプランが、いよいよ見えてきた。
10名ほどのアドテクノロジーチームで、100以上ある営業部署すべてに告知展開しなければならない。
なかなかに骨が折れ、時間も体力も割かれる業務だった。
「仕切りは、フォーラム部隊に任せては?」
「そうだな、依頼してみよう。この時期はヒマだろうし」
司会や会場設営は、餅は餅屋ということで、セミナー運営などを主な業務とする、同じユニット内の別グループに頼むことにした。
新庄は営業部署数と、大会議ホールの定員をすばやく頭で計算した。
「朝から晩まで、楠田さんと2ラインでローテを組んだとして、10営業日は必要ですね」
「仕方ないだろうな。ここで無理に圧縮したところで後が面倒なだけだ」
「数回ごとに、僕と新庄で互いの手ごたえをすりあわせる時間を設けたいですね」
「同感です。それもふくめて、俺がスケジュールの下案を切ります」
よく出る質問などは、こまめに吸いあげてこちらからの説明事項にどんどん組みこんでしまったほうが無駄がない。
新庄より3年上の楠田は、元からマーケティング部門にいた人間で、ディレクターとして活躍していたと聞く、才気にあふれた先輩社員だった。
よし、という加倉井の声を合図に全員が席を立ち、会議終了となる。
ふと加倉井が、フロアに戻る新庄に声をかけた。
「今週のグループミーティング、お前、出てくれないか」
「了解しました」