オフィス・ラブ #another code
隔週で行われる、ビジネスソリューショングループ全体の進捗会議だ。

各チームの代表者が出席し、互いの進捗を共有しあう。

本来であればチームリーダークラスが出席するのだが、新庄のいるアドテクでは全員が同等にチーム進捗を把握できているので。

加倉井は、いい修行の場であり、グループ長へ顔を売れる場でもあるこの会議に、さまざまなメンバーを出席させていた。


もうすぐだ、と思った。

この笑い出したくなるような多忙さも、説明会を皮切りとする、システムの一連の導入が終わるまでだ。


入りが早かった梅雨は、やはり明けるのも早かったらしく、8月を前に、すでに夏本番といった気候が押し寄せていた。

午後には打ち合わせがあるので、その前に腹に何か入れて、ついでに煙草を補充しようと決めた。

ビル内にも簡易のコンビニはあるが、ここまで暑いと、かえって屋外に出てみたくなる。

出たとたん、暴力的なまでの日差しが目の奥を焼き、昼時のオフィス街なのに人があまり出歩いていないのも納得がいった。

最寄りのコンビニに入り、冷房に息をついたところで、見慣れた姿を見つけた。



「大塚」



呼ぶと、雑誌のコーナーをじっと眺めていた彼女が、驚いたようにこちらを向く。

新庄をみとめると、その顔が嬉しそうにほころんで。

こういう瞬間も、好きだなと思った。



「新庄さんて、雑誌、買います?」

「買わない」



彼女の肩越しに雑誌の表紙を眺めながら、正直に答える。

車の情報は、最近は完全にWEBで仕入れるし、その他の雑誌は会社で読める。

経済誌を1誌、購読しているくらいだ。

ですよね、と難しい顔で彼女が腕を組んだ。



「雑誌って、誰が買うんでしょう」

「存在意義が変わりつつあるメディアでは、あるよな」


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