オフィス・ラブ #another code
雑誌担当の彼女は、なにやら悩んでいるらしい。

昼食がまだなら一緒にどうだと誘うと、はっと気がついたように、そうでした、と言った。

どうやら昼食を買いに来たコンビニで、雑誌の棚につかまったようだ。



「紙ならではの保存性と、ビジュアルの美麗さだよな。ただこれは正直、デジタルも追いつきつつあると思う」

「ですよね。だから、まずはそういう電子ツールを持たない層と、あとは…」

「俺が思うのは、雑誌にコンシェルジュ的な要素を求める層、かな」



そうかあ、と腕を組んで、息をつく。

とりあえず食えよ、とテーブルのサラダを指すと、またはっと気がついたように、そうでした、と言った。

年々、雑誌は生き残りの厳しいメディアとなっており、毎年無数の創刊と廃刊がくり返されている。

情報過多のこの時代に、何を売るメディアなのかが問われているからだ。


単なる情報ならWEBで手に入る。

それでも毎号数百円を出して買う人間がいるのは、雑誌のスタイルや提案方法そのものに信頼を置いているからだ。

自らとりに行き、自分で取捨選択するのではなく、これと決めた雑誌から、あらかじめ選ばれた情報をもらう。

そういう情報のとりかたをする層が今の購読層だと、新庄は考えていた。

まあ、メディアを専門にしていたのはもう半年以上前なので、偉そうなことは言えないが。



「女性誌にですね、手を広げたくて」

「前々からやりたかったとこだろ。いいじゃないか」

「やるなら長期的な出稿にしたいって欲が出ちゃって。どう持ってこうかなと」



慎重派の彼女らしい。

新庄は少し笑って、もう一度、食べる手がとまっていることを指摘してやった。

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