オフィス・ラブ #another code
内とか外とか、そんなものは問題ではない。

このシステムがすでに実働に至っているという事実をつくり、最速でそれを知らしめる必要があるのだ。

それができなければ、これまでかけた年月と工数が、すべて無に帰すといっても過言ではないだろう。


そういうつもりでの発言だったのだが、次長が顔に血を上らせて押し黙ったのを見て、誤解を招いたことに気がついた。

若干周囲が笑いをかみ殺しているようでもあり、どうケアすべきか迷ったのだけれど。

グループ長が「確かに社内は二の次だな」となかなかスマートなフォローを入れてくれたので、そのまま終えた。



「僕が新庄でも、同じことを言いますね」

「俺だったら、もう少しはっきりボンクラと言ってやるな」



隣の席の楠田がおかしそうに言うのに、加倉井が大仰に乗った。



「別に俺は、次長をボンクラ扱いしたかったわけじゃありません」

「当たり前だ。そんな軽率な奴、俺の部下じゃない」



一転、ぴしゃりと言われ、この狸、と思っていると、楠田がふいに真剣な声を出した。



「目をつけられてないといいけど」

「目、ですか」

「腐っても次長様だからな、まあ、そのていどで、ないとは思うが」



加倉井も、少し慎重な様子でうなずく。

目をつけるなんて、高校生のような響きだ。

つけられると、どうなるんだろう。


ただ、組織で生きていく以上、そういうバカバカしいと思えることも、決して侮ることはできないと学んでいたので。

当分おとなしくしていようと、心に決めた。

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