オフィス・ラブ #another code
とにかく、このままで済ますのは、なしだな、という全員の意識を確認して、短い飲み会はお開きになった。

異動が大きいぶん、新庄が割をくったという認識をされているが、今後もユニットに残る彼らのほうが、多い心労もあるだろう。

どちらにせよ、ここでの仲間意識は心強く、新たな刺激として、庄を楽しませた。


誰もが三ツ谷と同様、巻きこまれ、災難だったと言ってはくれるものの、やはりどこか、今回の事態は自業自得という意識もぬぐえず。

結局、恵利には事情を話さないという意思を貫いたまま、引越しの日が近づいた。


部屋と車は、彼女に時折見てもらいながら維持しようと考えた。

もしかしたら、そうすることで彼女をつなぎとめておけるような、そんな意識が働いたのかもしれない。

別に、距離ができることで彼女が離れていくなんて、これっぽっちも考えていないけれど。

物理的な遠さが、この関係に何かしらの影響を及ぼさないわけがないことくらい、わかっていた。





「ご迷惑をおかけします」

「まあ、これからもシステム関連で連絡はとりあうわけだし、意外と便利かもな」



最終出社の日、壮行会をしようと言ってくれた気のいいチームメイトたちに、事情が事情なだけに、勘弁してくれと固辞し。

それでも多忙な中、ランチタイムを利用して、全員が集まって食事会を開いてくれた。


会社が変わるとはいえ、新庄の業務内容はほとんど変わらず、ただ少し制作現場に近くなるだけだ。

なので、とんでもない裏事情による異動とはいえ、悲壮な空気はなかった。

こちらでの業務を慌ただしく引き継いだものの、チーム自体が、個人に業務を偏らせない体制になっていたため、スムーズに済み。

そのあたりも、どうやっても仕事が個人につかざるを得ない営業とは違うなあとしみじみ感じた。


恵利は何も言ってこない。

彼女は素直になんでも言うわりに、大事なことは胸に秘めてしまう優等生な一面を持っている。


ようやく、ふたりで関係を築きあげてきたところに、こんな横槍が入って。

言いたいことが、ないわけがないだろうに。

けれど、あるとしたらなんなのか、わからない自分が悔しかった。

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