オフィス・ラブ #another code
やっぱり泣いた。

新庄は、ここでも泣かせたと渋い思いがこみあげるのと同時に、心がほっと温まるのを感じてもいた。

彼女は自立して、しっかり意見を持ち、それを述べる勇気を持っているくせに、すぐにこうやって、ぽろぽろと崩れる。


いつもそれが、愛おしくて。

だからこそ、自分がいる意味がある気がして。


うつむく額に唇を落とすと、ぬぐいもしない涙に濡れた顔が、見あげてきた。


大丈夫、と伝えたくて、口づける。

不安がることは、何もない。


ただ寂しいのは、どうしようもないから。

そうなったら、ふたりで考えよう。


言ってくれさえすれば。


自分の想いは、いつだって。

すぐに恵利のもとへ、駆けつける。





けれど恵利は。

やっぱり、何も言わないのだった。




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