オフィス・ラブ #another code
堤が部課長を通してクライアントの内部を探ったところ、結局、最も大きな原因はやはり新庄の知るPR失敗のトラブルだった。
『でも背景として、商企時代から広告主と代理店という関係には疑問を抱いていたらしいね』
「外からだと、そのへんは不気味に見えるからな」
『そ、癒着とかおもねりとかね。そういう不満がもともとあったところに、あの事件で』
「ずっと、なんとかしてやりたいと思っていたわけか」
そう、となぜか楽しげに堤が言う。
『理由さえわかれば、やりようもあるから。まあ見てて』
そう笑った彼が再び連絡を入れてきたのは、数日後だった。
本部長の所属する大学のOB会の理事からひとこと言ってもらう、という策を練ったのだ。
偶然にも新庄は同じ大学の出身で、しかもその理事であり、新庄たちの会社の元役員でもあるOBは、大阪在住だった。
『お前、説得してきてよ』
「向こうのプロフィールなんかは、用意してもらえるんだろうな」
『もちろん。現役時代を知ってる役員とも話せるようにしとくよ。お前が話の早い奴で助かるなあ』
だってどう考えても、自分以上の適任はいないだろう。
我々代理店の苦境を売りこんで、東京に引っぱって行けばいいんだろう?
それができなくて、何が元営業のチーフだ。
というわけで、スケジューリングまでは堤に任せ、6部のスポークスマンのような形で新庄が出向くことになったのだった。