オフィス・ラブ #another code
『申し訳ないけど、海外出張から帰ってすぐになるよ』
「かまわない。上京の日程の相談もそこで済ませたいから、本部長のだいたいのスケジュールを送っといてくれ」
『強気だねー、了解』
強気だとも。
これでうまくいけば、彼女の心労をひとつ減らしてやれるのだ。
新庄の記憶にある限り、ストレスめいたもので彼女が身体を壊したことはない。
それがあそこまでつらそうにしていたんだから、今のこの営業部の危機が、相当な精神負担になっているんだろう。
自分も元営業として、取り扱い額を減らされる衝撃は痛いくらいわかる。
なんとしてでも、広告主との関係を正常に戻してやりたかった。
もちろん、6部全体のためにも。
そして肝心の彼女は、電話に出ない。
再度かけて、思わず舌打ちが漏れた。
仕事用の携帯にかけることも思いついたけれど、さすがにそれはフェアでない気がした。
何を考えてるんだ。
言わなきゃ、わからない。
離れてるんだから、言わなきゃわからない。
目の前にいたら、一発どやしつけてやりたいくらいの気分だった。
──言えって、言ったろう!