オフィス・ラブ #another code
「そうだな、15から20」
『さすが新庄さん、一番強気です』
電話口の賀茂が、明るく笑う。
そうか、と煙草を叩きながらあいづちを打った。
『他のおふたりも、15%前後というご意見ですね。ここは一発、20%で交渉を始めましょう』
「キックオフには呼んでくれ。そっちに戻る」
もちろんです、という快活な声と共に、通話が終わり。
新庄は、ぱちんと閉じた携帯を、手ごたえを確かめるように握りしめた。
巻き返しだ。
一定期間が終了したら必ず元の部署に戻れるよう、確約にも似た意図で、業務の持ち出しを上に認めさせるつもりだった。
現職の業務は絶対に減らさず、異動前の業務もこなす。
そのパーセンテージを、新庄は20なら実現できると試算した。
最も戻れる可能性の低かった新庄に光明が差したのは、数日前、堤から情報が入った時だった。
『マーケが密かにもめてるよ。これじゃ正式な打診は遅れるだろうから、俺から速報』
「もめてる?」
堤が話したのは、笑いだしてしまうような話だった。
そもそも新庄のグループが立ちあがったのは、この出向先である会社の勢力を押さえ、開発中のシステムの実権を握るためだ。
それが、今回の新庄の異動で、どういうことになったかというと。