オフィス・ラブ #another code
『せっかく押さえたのに、将来を嘱望される優秀な社員がひとりそこに行っちゃあ、目論見と違うじゃんってこと』
「また、上が陣取りしはじめたのか」
『そ。例の次長さんと、グループを立ちあげたお偉いさんの間で、すったもんだの騒ぎみたい』
「笑えるな」
『傑作だよね。当然ながら、次長さんの旗色が悪いよ』
本当に、傑作だ。
つまりは、しがらみに振り回され、しがらみに救われるかもかもしれないということだ。
これだから。
働くのは、やめられない。
その情報がマーケ内にも回ると、さっそく本社の3人が動きだした。
元々、従来の業務をあえて引きずるべきだと提案していたのは新庄で。
それを公に実践するいい機会だと、賀茂を斥候役に戦略を練ってくれたのだった。
そろそろOB役員を迎えに行く時間だ。
新庄は煙草を消して、喫煙所を出た。
本社では、恵利に会えるはずだ。
懐かしい、あの東京の。
すべてが始まった、あのオフィスで。