オフィス・ラブ #another code
──新庄くんが、マーケティングユニットへ異動になります。
発令に先駆けた告知は、思ったとおり驚きをもって迎えられた。
壁際に立つ彼女と、目が合う。
その表情は冷静で、けれどさすがに少し、驚いてはいるようだった。
何度、言おうかと思ったか知れない。
時折驚くほどちゃっかりした顔を見せる彼女の希望で、湾岸を走っている間。
思いつく、喜びそうな場所で彼女と過ごす間。
信頼の目を向けられるたび、裏切っているような気分になって、彼女にだけは言ってしまおうかと思った。
しかし、まだ内密の人事でもあり。
思ってもみなかった、安らいだ楽しい時間を壊したくないという勝手な思いもあり。
結局、こういう形になってしまった。
けれど、それでよかったのかもしれない。
事前に知らせたところで、何も変わらないのだから。
送別会の幹事は彼女が務めてくれるらしい。
そういえば、メディアのチーフになった際の歓迎会も彼女が幹事だったと、懐かしく思い出した。