オフィス・ラブ #another code
とんでもないことをしてしまった。
頭を占めたのは、そんな思いだった。
自分は。
とんでもないことを、してしまった。
居心地のいい料理屋の片隅で、見あげてくる彼女の目に気がついた時。
ああ、またか、と。
かすかな失望を覚えたのは、確かだった。
またここでも、そうなってしまうのか。
いい部下だった。
いい関係を築けていると思っていた。
性が違うというだけで、なぜ良好な関係の維持に、こうまで自分は苦労するのだろう。
自分はまた、どこか間違えて、望んだのとは違う方向にものごとを導いてしまったらしい。
けれど、反面。
さして驚いてもいない自分がいた。
どこかで、こうなることを予見してはいなかったか?
彼女の向けてくる、まっすぐな好意の中に、まったく何も感じとらなかったと言ったら、それは嘘だろう?
もう、彼女の上司でいることもない。
おそらく、今後、ほとんどかかわることはないだろう。
それなら。