オフィス・ラブ #another code
彼女の選んでくれた送別会場には、まさに新庄好みの喫煙スペースがあり。
下見をしなければ絶対にわからないであろうその場所の存在に、部下の惜しみない気づかいを感じた。
酔いにくい体質らしい新庄は、酒の席が温まってくると、場のテンションとのギャップにくたびれ、離れたくなることがある。
今日は特に、ひとりでゆっくりする時間を持ちたくもあり、タイミングを見計らって飲み物ごと逃げてきた。
ようやく味わうことのできた煙を存分に肺に入れると、神経が休まると同時に目覚めるような、いつもの感覚が襲う。
この一週間、半分ほどの時間ではあるけれど、新部署でも業務についた。
とはいえ向こうはまだ準備段階で、新しい部署の形態すら決まっておらず、まずそれを全員で決めるところからという未開拓ぶりだった。
それはそれで、面白い。
入ってから知って驚いたことに、新たに集められたメンバーの中で自分は最年少に近く、部下どころか後輩すらほとんどいない。
それでいい。
そんな贅沢な働きかたが許される時期は、きっと今だけだ。
自分はあそこで、何ができるだろう。
どんな仲間を得るだろう。
プロジェクトが立ちあがるまでは、それぞれ現存する部署の所属として、形ばかりそこの業務もこなす。
そこにはアシスタント業務をする若い女性が数名いて、けれど今の部下である彼女と比べると、どうしても仕事人としての魅力に欠け、いささかがっかりした。
そうか。
彼女を部下と呼ぶのも、今日が最後か。
そんなことを考えていたら。
当の本人が来た。