オフィス・ラブ #another code
「中間地点であり、新社屋もある、名古屋で開催したいと」
「何が中間地点だ。完全にあちら寄りじゃないか」
ははあ。
この、性急でなりふりかまわない人事の裏側が、わかってきた。
マーケティングを専門とする子会社を興したはいいものの、そこをコントロールできなくなったのだ。
本社が主導だったとはいえ、向こうで開発をした画期的なシステムも大きな要因のひとつで、競合代理店に先駆けてプロトタイプのリリースをしたところ、予想以上の反響があり。
つまるところ、それを自社で管理したくなったのだ。
中くらいの会議室に、十数名が集まっている。
新生部署の中で、そのシステムに濃く携わるであろう人間が顔を出している場だった。
部長と、おそらくチームリーダーになるであろう中堅の社員がうんざりと会話を交わすのを、面白く見る。
野心的な部長ではあるが、この陣取りゲームは彼ではなく、もう少し上の野望によるところだ。
好きなように人員を集めて部署をつくる機会を手に入れ、表向きはしれっと意向に便乗しているというところか。
いろいろな人間がいる。
そう考えて、笑みが漏れた。
なんでもいい、面白い仕事ができるのなら。
「新庄くん、言いたいことある?」
めざとく中堅社員が声をかけてきた。
加倉井(かくらい)という、新庄の5、6年上の社員で、同じく元営業だ。
いえ、と失礼を詫びてから口を開く。