オフィス・ラブ #another code
車を揺らすドアの衝撃に、その怒りの強さを思い知る。


大塚のためだ。

そう、思っていたんだけれど。


自分が決めることじゃない、と。

言われてみればそのとおりで、だけど他に何ができたとも思えない。


また間違えた。

煙草を灰皿に落とし、ステアに手を置いたまま、大塚に言われたとおり、考えてみる。

きっとまた、自分は間違えた。


何を?


大事にしたいと思うけれど。

それができないから、離れてほしいのに。

そのことが彼女を傷つけてしまうなら、いったいどうしたらいいというのか。


どうして自分なんだろう、と苦々しく思う。

どうして、よりによって自分を選ぶなんて馬鹿なことを、彼女はしたんだろう。


ステアの上に腕を組み、顎を乗せる。

暗がりの中、エアインテークのふくらみを見るともなく眺めた。

アイドリングの心地いい振動が身体を伝う。


これで終わるんだろうか。

もう、仕事上の縁もない。

今日のように偶然会うことも、きっとほとんどないだろう。


時は、彼女の傷を癒してくれるだろうか。

彼女の心の中から、自分を消してくれるだろうか。


自分はそれを、望んでいるんだろうか。





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