オフィス・ラブ #another code
簡単なことだったらしい。
慣れない、自分の思いを順を追って伝えるという行為を、それでも、自分なりに懸命にやってみると。
大塚は、あっさりと許してくれた。
どうやら自分は、もう彼女を大事にできていたらしい。
よくわからないけれど。
彼女が言うなら、そうなんだろう。
「最近、人乗せること増えたの?」
ふと寄ったガレージで、エンジニアが車を見て言う。
寒そうに手を擦りあわせながら、ナビシートのバイザーを指して言うのに、ああ、と合点がいった。
「少し」
「新年早々、捕まるなよお」
「最近は、もうそんな飛ばさない」
バイザーをふさいでいた、ネズミ取りの探知機を外したのだ。
大塚が隣に乗るようになったから。
自分は、宿題をもらったらしかった。
大事にしたい、その次は?
わからない。
正直なところ、わからない。
二度目の口づけは、新庄からだった。
今度は自分でも認める、純粋な好奇心と愛しさに負けて。
その後も触れるたび、大塚は戸惑うように視線を泳がせ、ふてくされたような、あきらめたような態度を取る。
それがどうにもいじらしくて。
健気で可愛くて、つい遊びたくなる。