オフィス・ラブ #another code
ウーロン茶を飲んでいたグラスにビールを注がれそうになって、失礼にならないよう手をかざして断る。



「車なので」

「でも、今日は泊まってくんでしょ?」

「明日は、早く出ようかと」



電車で来ようと思っていたのを、ふと前日の夜に思い立ち、車に切り替えたのだった。

妹にも連絡し、向こうの時間に合わせて送ってってやると言うと、久しぶりのドライブだと喜んだ。


明日は夕方に約束があるから、午前中には出ないとまずい。

飲んだところで酔わないので、気にすることはないのだけれど、長距離を運転することを考えると控えたかった。


その時、そうだ、と思いついた。

もっと早くに帰って、大塚の家に寄ろう。

向こうに予定があったとしても、午前中なら、顔を見ることくらいはできるかもしれない。


特に何を話したいわけでもなかったけれど。

本来なら今日一日一緒にいられたことを思うと、なんとなく会わずに終わらせるのは物足りなかった。



「絵里」



いつの間にか台所に引っこんでいた妹を見つけて声をかける。



「悪いけど明日、電車で帰ってくれないか。俺、早く出るから」

「いいけど、どうしたの?」



急用、とだけ言って、かろうじて顔のわかる従兄弟を探してその席に行く。

こうなったら、なんとしてでも酒を飲むわけにはいかなかった。



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