オフィス・ラブ #another code
忌々しいそのうしろ姿を見ながら、いつから自分たちは、こんなふうに道が分かれたんだろうと考えた。


きっと、あの時だ。

松岡の退職が部内に告げられた、あの時。


その報告のあった部内ミーティングから戻った堤は、新庄の隣の席につきながら、くすりと笑ったのだった。


笑ったのだ。

笑った。


信じられない思いで、新庄が愕然とその横顔を眺めていると、その視線に気づいたのか堤がこちらに顔を向け。


なに?


片目をすがめながら、楽しそうにそう問うてきた。

反動で回転した椅子の背がデスクに激しくぶつかる音で、自分が立ちあがっていたことに気がついた。



「堤」



いい仲間になれるかもと思っていた時期もあった同僚を見おろす。

湧きあがる感情の激しさのあまり、かえってその声はささやくように響き、震えた。



「俺は」



お前を、許さない。



< 66 / 148 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop